軟骨無形成症とともに

軟骨無形成症と診断されても、多くのお子さんは元気で、学校に通う、友達と遊ぶなど、楽しく活発な日常生活を送ることができます1

一方で、病気に伴いさまざまな合併症が表れ、年齢とともに症状が変わる可能性もあります2,3。しかし、何が起き得るか知ることで、お子さんが「子供らしくいられる」 ように手助けできます。

 

 

どのような症状や合併症があるのですか

家族計画について

軟骨無形成症の女性であっても、妊娠や出産の機会は普通の人と変わるものではありません。しかし、この病気をもつ女性の骨盤はサイズが小さいため、出産方法として帝王切開を勧められることがあります7

また、軟骨無形成症は遺伝性疾患ですので、子供たちに受け継がれる場合があります。両親のどちらかにこの遺伝子変異がある場合、子供が同じ変異を持つ確率は50%(2人に1人)とされます(常染色体優性遺伝)7。詳しいことは、遺伝に関する専門の診療科(遺伝診療科、遺伝相談外来、遺伝カウンセリング外来、など)にご相談ください。

日常生活について

日常生活で困難が生じることもあるかもしれません6,8) 。周りの人、医療関係者、患者会などに積極的にサポートを求めたり相談することが役立つこともあるでしょう。

(「軟骨無形成症の治療やケアに関わる人々」はこちら 、「患者会など」はこちらをご覧ください) 日常生活上の課題には以下のようなものがあります。

  • 移動

  • 物に手を伸ばす

  • 入浴

  • ドアの開け閉め

  • 車の運転

  • トイレ

乳幼児期の注意点

乳幼児期は、ほかの年代と違う特別な注意が必要になります。これは、その時期に起こりやすい重大な合併症(大後頭孔狭窄、脊椎後弯)を防ぐためです。医師の指示と基本的なガイドラインに従うことがお子さんを守る助けになるでしょう。
赤ちゃんの安全のための一般的なポイントの例は次のとおりです。

  • 赤ちゃんの頭、首、背骨全体を常に支えるようにしましょう2,3

  • ベビーカーは背もたれがしっかりしているものを使用しましょう3

  • チャイルドシートはできるだけ後ろ向きに座らせましょう3。適切なチャイルドシートの選び方は医師にご相談ください。

  • 一人座りなどは、体幹の筋肉がしっかりするまで無理にさせないようにしてください2。軟骨無形成症の子供は、お座りなどが遅くなる傾向がありますが、焦る必要はありません 。

  • 座位型の歩行器や抱っこ紐は避けてください2

これ以外の補助器具などの推奨事項や注意点については、必ず専門の医師や医療スタッフに相談してください。

成長に伴う周囲への適応

学童期になると、子供は、家でも学校でもどこででも何でも自分でやりたいと思うようになります。この時期に自分の身の回りのことができるように試行錯誤していくことが、子供の自立につながります。また、通学する学校の関係者に連絡したり、相談することも重要です。

  • 少し工夫することで、生活動作の負担を減らすことができます2

    • 踏み台や脚立を用意する
    • ドアノブや照明スイッチの位置、台所などにある家電製品の設置場所を低くする
  • トイレの使用では他者による助けのほか、道具の利用が考えられます2

    • 踏み台などを利用する
    • 清拭具の利用(トイレトレーニング時から練習できます)
  • 学校で使うもの、持っていくカバンなども工夫することができます。

    • 持ちやすくするサポート機能の付いたペンやペンホルダー等を使う3
    • ロッカーやフックの位置を低くしてもらう2
    • 荷物を軽くする・軽いカバンを選ぶ2
  • 「座る」ための工夫をすることで、家庭でも学校でもより快適に過ごせるようになります2

      • 背もたれで姿勢を調節する
      • 足置き台を置く
  • <車の運転ができる年齢になったら>

      • 運転補助装置3
      • シートの位置の調整

「軟骨無形成症の子供が成長していくなかで、社会的にも感情的にも壁にぶつかる場合があります。そういうとき、その子供は、自尊心や社会的な圧力、不安などの問題を抱えている可能性があるのです。」

– (ある患者さんの保護者の言葉)

軟骨無形成症の治療やケアに関わる人々についての解説はこちらをご覧ください。

軟骨無形成症の診断と治療

  1. Hoover-Fong, J. et al.: Pediatrics. 2020; 145(6): e20201010.
  2. Committee for the Creation of Clinical Practice Guidelines for Achondroplasia, Research Group for the “Establishment of a Clinical Practice Network for Skeletal Disorders Aimed at Developing Clinical Practice Guidelines” of the Japan Agency for Medical Research and Development (Research and Development Representative: Keiichi Ozono). Clinical Practice Guidelines for Achondroplasia https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001121/4/achondroplasia_clinical_practice_guidelines.pdf (referenced 20210603)
  3. Pauli, RM: Orphanet J Rare Dis. 2019; 14(1): 1.
  4. Tachibana K et al.: Pediatrics 1997; 60(8): 1363–1369.
  5. Hunter, AG. et al.: J Med Genet. 1998; 35(9): 705-712.
  6. Pfeiffer, KM. et al.: Am J Med Genet A. 2021; 185(1): 33-45.
  7. Gene Reviews Japan.”Achondroplasia”.http://grj.umin.jp/grj/achondroplasia.htm (see 20210603)
  8. Matsushita, M. et al.: Calcif Tissue Int. 2019; 104(4): 364-372.